「ここが、魔王のいる迷宮の入り口か。。。」
「ここから先は、真の勇者でないと入れない。」
この水盆に右手をひたせば、選ばれた勇者のみに扉は開かれるのだ。
静かに、扉は開かれた。前に進むにつれ、次々と扉は開いていく。
まるで我々を魔王の潜む、最奥へと誘うように----
迷宮の内部は閑散としていた。
宝探しで有名な場所とはいえ、迷宮の奥に潜むという噂の、最強の魔王を恐れて、生半可な勇者では近づけないからだろう。
我々の足音だけが空洞に響く。
気のせいだろうか、右側の壁のたくさんの肖像画から視線を感じる。
一見、豪奢な貴族の館に見えるが、いつ何時、魔物が襲ってくるかわからない。
気を抜かないよう、あらためて腰に差した剣に手をかける。
妖魔の気配はするが、実体のない影がうごめき、剣は虚しく空を切るだけだ。
やはり、霊感を持つ魔法使いをこのパーティに加えるべきだったのか。。。?
魔物の妖気はますます濃くなっていく。
誰もいない豪華な室内に灯りの灯ったシャンデリアが1つ。
この先、どうやって進んでいったら良いのだろうか。。。
事前に入手していた情報よりもずっと巨大な迷宮だったようだ。行けども行けども、きりがない。
どうやら鏡の間に出たようだ。事前情報では、魔物だけを映し、人間は映らない魔法の鏡があるということだった。。。どうやらこれのことらしい。予想通り、我々の姿は映っていない。
手探りで進んでいくうちに、どうやら食堂にたどり着いたようだ。
豪華な金銀の食器に目を奪われていると、不意に、「ようこそ、我が城へ」と、どこからともなく声が響いた。
なんと、壁に掛けられた貴族の肖像画から声がするのだ。
肖像画に描かれた男から話を聞くと、どうやら大昔のこの城の城主だということだった。城全体が魔法をかけられ、城の人々は肖像画に閉じ込められたらしい。
たしかに、左側にたくさんの肖像画が壁に掛けられている。
城主によると、この扉のない通路をまっすぐに進むと真紅の部屋に出るという。そこにある王冠と剣を肖像画の前に捧げて欲しいというのだ。
たしかに真紅の部屋は存在した。
鏡の中に妖魔の影がうごめいて我々を妨害するが、奥の部屋に何か光るものがあるようだ。
「あった!」
これが城主に代々伝わる王冠と剣だろう。
さっそく元来た道を戻り、肖像画の前に置くと----------
それまでずっと薄暗く、
妖気に覆われていた城はたちまち、
陽気に覆われて(ハイここ笑うとこ)
無事、世界に平和が戻ってきたのであった。
めでたしめでたし
注:全画像