ぐるぐるぐるめ♪

栃木県産。東京→奈良→静岡→ふたたび東京、たま〜に海外旅行、食べある記。10年以上書いてますので、すでに閉店しているお店もありますがご容赦を。

2023春のいちごさんどうと広重おじさん(表参道)

前日雪模様だったというのに、翌日はもう春めいた晴天。

三寒四温とはこのことかー。

たまたま建国記念日に訪れた表参道は大規模な奉祝パレードだった。

(長いパレードの一部を切り取った)

 

美術館巡りのついでに前々から狙っていたアレを食べることにする。

そう、この、積み重なるいちごの重みで潰れそうなコレを、、(昨年から食べたかったんだよね)

 

LOVE&TABLE | Afternoon Tea

 

やってきましたよ、いちごフェア真っ最中。

画像から、うららかな春風を感じるよ。

 

店内、完全にいちごフィーバーですわ。

 

いまの時期、表参道のカフェっていちごに狂ってるんだよね(←言い方)

表参道が苺参道(いちごさんどう)になってる。

2023年は1/15から3/15まで、あちこちのカフェでいちごスイーツを提供してるらしい。Afternoon Tea LOVE&TABLEもその中の1軒。

 

さぁ!お目当てのアレを!!

アレを注文するんだ!!、、、、あれ???休止中?もちもち食感の苺ミルクレープ休止中?!

ガーーーーーーーーン∑( ̄Д ̄)

、、、ぁあっ!やっぱり、新宿の支店に行けばよかったかな?

スタッフに聞くと、どうも表参道店だけは別のメニューを出すらしい。

しまったーーーーー(> <)完全に調査不足でしょ。わたしったら。

 

代わりのメニューがこれです。

いちごさんどミルクレープ


、、、、、まぁいいか、、、

これはこれで、、、くるしゅうないっていうか、、、近う寄れっていうか、、

うん、最高じゃない?!

(シュワシュワいちごソーダも付けた)

 

 

さてと。近所の太田記念美術館で買ってきた図録でも開こうかな。

じゃーん!

歌川広重 東海道五十三次<保永堂/行書/隷書版>!

ファンシーな苺カフェで浮世絵見てるの私くらいでしょうよ(笑)

 

広重おじさん図譜 | 太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art

 

歌川広重の浮世絵に登場する、なんとも味わい深いおじさん達をたくさん集めた展示があったのだ。(別におっさんが見たいってわけじゃなくて)殺伐とした憂世で、のんびり愉快に生きてる市井の人々をなんだか見たくなっちゃったんだよね。

しかし私以外にも世の中にはそんな現代人がけっこういるらしく、美術館内は賑わっていた。

まぁ、のんびり愉快に、と言っても江戸時代の平均寿命は今より短いし、当時の人々にも色々不便なことや多くの制約はあっただろうことは想像にかたくない。

 

図録を撮影したスマホ画像をここに登場させていいものかわからないけれども一部を以下に貼り付ける。

五街道の起点となる日本橋を皮切りに、53の宿場町をたどり、京都までの124里8丁(487.8km)のスナップショット、、、じゃなかった、浮世絵を見ることができる。

最初に凄いな、と思ったのは箱根

 

私は以前、江戸時代の箱根越えの道「箱根旧街道」を歩いたことがある。

huaca.hatenablog.com

まず、この絵を見ただけであの急峻な石畳をありありと思い浮かべることができる。道の周囲のごつごつした岩肌も。これなら行ったことがない人にもどれだけ険しい道なのか伝わるし、実際に行った人はこの絵を見れば思い出して旅の様子を伝えることができる。旅行本の役割を完璧に果たしている。まさに江戸時代の「るるぶ」。

でも、もっと凄いのは「こんな景色は実際には無いのに、箱根が圧縮されて表現されてる」のだ。隅々まで間違いなく箱根だ。しかし、近くに湖はあるのけれどこんなふうに見ることはできなかった(←実際に歩いた感想)。もしかしたらドローンやヘリでどこかの角度から見ればこんなショットがあるのかもしれないけれど、もちろん地上からはこんな風景は見えない。見えないのに間違いなく箱根。

広重、天才かよ、、、、(みんな知ってるわ)

 

あと、見逃してしまいそうだが重要なのが雨の浮世絵、「大磯 虎ヶ雨」

ああ、雨の日の移動は大変だよね、あの時代、折り畳み傘もないし、、、で終わる感想ではない。

曾我物語の登場人物、大磯に住む虎御前の涙が雨で表現されているのだ。江戸時代の人は、この雨の大磯を見て「ああ、曾我物語ね」と連想できたらしい。

江戸時代の人、教養高すぎでしょ。うん、寺子屋もたくさんあっただろうし。書物屋で草子もたくさん売られていたし。(しかし私なんて最近の大河ドラマで初めて知ったクチだよ曾我物語)明治維新直前、民の隅々まで行き渡る教養が新時代を迎える原動力になったのだろうなぁ、、と想いを馳せてみる。

 

あと、個人的に好みなのは ”ぐるめ五十三次” 行書版の方だ(私が勝手に名付けた)。

旅の途中の茶屋で休憩しつつ安倍川もちを、大きく口を開けてもりもり頬ばる旅人。

そうねぇあの時代、電車も車も保冷バックもないし、お土産に買ってくることはできないから、その場に行って食べるしかないよね、、って感想じゃなくて。

客のとなりでお餅をついてるんだよね。ってことは、この、つきたてのモチモチおもちに、きな粉と砂糖をまぶして食べ、、、

食べ、、、

食べ、、、

食べたい。

広重、くいしんぼうだな。描写がくいしんぼうだよ。

つきたてもちもちの安倍川もちをホイホイお客に出して、うまそうに食べるお客がサクラになって他のお客がホイホイ食べに来るんでしょ?ほら画像右側の旅集団がうらやましそうに見てるじゃん!絵から声が聞こえてくるんだよ!(幻聴)

だいたい、ここは安倍川なんだから川を描かなきゃダメじゃん!、、って背景に川が描いてあったわ!文章も無いのに!なにこの的確な情報!伝え方!天才かよ(みんな知ってる)

ちなみに真ん中の天狗の旅人は諸説あるけど金比羅道者らしい。この一枚の中に情報量が多い。

道中、神社や寺に寄り道してお参りして行くのも良い旅だね。

じっさい、行きは東海道で帰りは中山道善光寺に寄っていたらしいしね、、

あ、中山道の旅本も欲しくなってきた、、また課金するか、、、

(中山道六十九次っていうのがあるんだね。もはや道沼だな。。)

 

こちらは沼津の絵で右側に見えるのはかつおぶし屋。

かつおぶしが特産物だったことがわかる。

なるほど!沼津なら徒歩でもあと数日で江戸に着くもんね。帰りにここでかつおぶしを買ってお土産にしろってことでしょ?かつおぶしなら持ち歩いても大丈夫だし。情報サンキュ〜、広重!(私が江戸時代の人間ならそう思う)。

 

急峻な山道(宇津ノ谷峠)を登ってきて、もうヘトヘトで口をパックリ開けている旅人(画面左、真ん中)

そこに待ち構える、お茶屋!いや〜、商魂逞しい。

そうだよね、ここに茶屋があったら旅人は絶対寄って休んで行くね。お茶や水を飲むでしょ。そして絶対食べるね、店の看板に書いてある名物の十団子を!今ネットで調べたら色とりどりの団子を10個ずつ束ねたものだそうな。

わかるよ、疲れ切った時に食べる甘味は生涯忘れられない感動だよね。わたしもあの極寒の箱根旧街道お茶屋で買った甘酒が忘れられないんだよ、、あれ以来、時々甘酒を飲むようになったしね。

この浮世絵で事前に学習して旅に出るからグルメ予習はバッチリだ!(私が江戸時代の人間ならそう思う)頂上で団子が待ってるから山道だって頑張って登れるよ。

 

任せて!行書版全部読んで暗記したから!と得意げに旅仲間を案内するだろう。

ほらこれ日坂の心霊スポット!夜啼石!(そんな情報いらん、と言われそう)

日本昔ばなしでもやってたっけね。

ところで、日坂では、保永堂版、行書版、隷書版と全部に登場してスリー夜啼石でフィーバー状態なんですが。

日坂の名物は心霊スポットしかない問題勃発

なのか、

広重にオカルト好き疑惑発生なのか

どっちなのか。

 

広重や北斎が活躍していた19世紀後半の江戸時代で、私があの時代に生きるならどんなふうに暮らしていただろう。まぁ私はいろいろ迂闊だから、現代の日本でないと、とても生きていけないのはわかっているのだけど。

まぁ、こんな危ない職業についたら私だったらすぐ死んじゃいそうだからデスクワークがいい。(デスクワークとは一体)

図右:城壁に漆喰を塗る職人が高い足場から遠くをのぞいている。(危険)

ていうか仕事しろ(笑)

、、、というちょっとおふざけな絵の中に、旅人にとって重要な情報が存在する。

そう、左に見える、大きな川にかかる橋。

現代から見たらなんてことない橋だけど、旅人にとっては重要だ。

この豊川は、橋を渡れば良いのであって、川を渡るための人足や専用の舟、輦台は必要ないということだ。本当に昔の川越えは大変だよ、、

 

下図:大井川(これは大変そうだ、、、)

 

日本橋で始まった五十三次は、京都の三条大橋で終わる。そう、橋と橋が始点と終点に共通しているのだ。まるで橋が現代と江戸時代を結ぶかのように。

 

江戸時代に生きるなら浮世絵製作所のスタッフとかどうかな。木版画の摺師や彫師の一人の職人として働くのは。それなら命の危険はなさそうだ。有名な絵師の新作を真っ先に見て、「北斎先生の新作、ものすごいな、ウッシッシ」(どんな絵だよ)とほくそ笑んで仕事帰りに書物屋で「新作出てないかな、、、」鮨の屋台で夕飯を食べて、長屋を通りかかった棒手振りから酒を買って晩酌して1日が終わるの。そして日々貯金して、お金が貯まったら旅に出よう。そのまえに勿論この広重の浮世絵で旅の予習するのだ(ぐるめ中心に)。

 

だけど考えてみたら私は現代の江戸で似たような日々を生きてるよな。(浮世絵師ではないが)

 

ふとそんなことを考えながら表参道の大通りに出たら、パレードに参加した祭り装束の人々がゾロゾロ歩いていた。法被、足袋、股引、鉢巻、、

まるでさっき見てきた広重の絵の中から現代に抜け出してきたみたいだった。

 

2023春のいちごフェアと広重(終)